クラフト メルクリンとミニチュア模型制作の専門店

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Reported by Y.Miyake/CRAFT at Potsdam Germany
ICE...これは「イーツェーエー」と読み、ドイツ都市間特急InterCityExpressの略称。今回はドイツの新幹線、ICEを私の独断試乗?体験をもとに特集します。エスプレッソは入りましたか?ではブレークタイムをお楽しみ下さいませ...
ICEは毎時一時間の割合で、ベルリンOstbahnhofからルール地方Duesseldorf,Koeln方面へ出ています。私はBerlinの西側に位置するZoologischer Gartenから乗車する事に。戸が開けられると、われ先にと乗車口に殺到する人々...入り口には高い段差がついているので、重い荷物を持つ人は乗車にてこずっています。ちなみに
ドイツの列車の扉は自動開閉しないんです。ICEの場合はセンサーボタンを指で押すだけでよいのですが、いまだに重いレバーを手で廻して開けなければならないものも多いのです。無駄がないと申しましょうか、かよわい私には少々きつい...かな?
「バム」という鈍い音と共に戸が閉まると、外界の雑踏から全く隔絶された空間が出現します。ドイツ車、特にメルセデスに乗せてもらうときにもこういう経験をすることがあるのですが、おそらく造りが頑丈なためだろう(と素人的感想)と身体で感じるほど。でも聴覚的にだけではなく視覚的にも外界から隔絶されている気さえします。ICEを象徴するのは白地に赤と黒のストライプですが、この黒いラインはブラインドグラス。中からは外の様子がよく見えるけど、外からは車内の様子がほとんど見えない。いわゆるフルスモークウインドゥ。車内に乗った自分の連れ合いを外から探す人々は、相手が自分の目の前で手をふっていても、気がつかず愛する人の姿を追っている...中から見ているとちょっと気の毒。列車が音もなく滑り始めました。
私は席の予約をしない主義。席の予約をすると余計にお金がかかるばかりか、席を決められてしまう。もちろん席を確保するために予約をするのだからこの表現は矛盾していますが、
ICEは指定席は座席が決められておらず、言い方を変えれば全席自由指定。予約は車両の前の方から順に詰めて入れられるんです。だから列車全体がどんなにすいていても、指定席を予約すると横にだれか座ることになったりして、他に席が選り取りみどりの車両の中で、身も知らない者同士がある一角を占めていたりしてシュールな光景を目の当たりにします。私は指定席を取らずに混んでいたら、デッキに座る。じゅうたんが敷いてあるからそんなに寒々しい思いをすることもないんですね。予約が入っている席には荷物棚のところに該当する区間が表示されています。これは座席番号と切符の照合の手間が省けると言う事なのか...う〜んここにも無駄がないっっ!!
これはちょっとした現地人情報ですが、お気に入りはGuten Abend Ticketという制度。19時以降午前2時までならば、どの区間、どの列車でも59マルク(2001年11月現在、土日は69マルク)で乗車できるというもの。ICEは超特急扱いなので、特急料金をさらに10マルク上乗せされますが、それでも長い区間を乗車するなら、ぜひ一考に価するものです。例えばBerlin/Duesseldorf間の場合、ノーマルチケットを利用すると片道180マルク、Koelnまでだと実に200マルクもかかってしまうんです。ただし、これを使うと当然到着時間が遅くなってしまうので、接続の列車に間に合わなかったりで、結局タクシーに高い金を払わねばならないこともあります。
話を車内に戻しましょう。車内は結構な混み具合で、まったく予約されていない席は見当たらない。とりあえず、Hannoverまで予約無しの席に陣取る。一応、お隣さんにも空いているかどうか確認を取りました。エチケットということもりますが、そればかりではなく、結構特典もついてくるんです。"Hier ist noch frei?"(ここ、空いていますか?)すると、その男性が荷物を棚に上げてくれちゃった。ほら、どうです?言ったとおりでしょう。これで行き先まで告げておけば、眠っていた場合にゆすって起こしてくれるし...にこにこしていたら、荷物の中からおにぎりを出すのを忘れた私...恨めしく荷物を見上げるも遅し。「すみませんもう一度荷物を降ろしてください」と言えないのが日本人的性分。Hannoverまで2時間の辛抱、とあきらめた私でありました。ググゥ〜...
まもなく車掌さんがIhr Fahrschein, bitte!(切符を拝見)とやって来た。DBには女性の車掌が少なくない。ユニフォームのタイをちょうちょむずびにしている。かねがね私はこのDB女性職員のタイの結び方に関心を持ち、観察してきましたが、これはそれほど厳しい決まりがあるものでもないらしいんです。しかし確かに年齢、受ける印象、体型などによってなんらかの傾向があるみたい。たとえば、ネクタイ調にタイを結ぶというもの。こういうひとには優良な職員が多い感じがする。その他、若い職員に多いのはちょうど女子学生のセーラー服についている赤いチーフのように、二つ折りにしたものを肩全体にかけ、前で小さく結ぶというものも見受けます。先日、このタイを幾重にもダンゴ結びにし、ちょうどハワイでかけてもらうレイのように首からかけている女性職員と遭遇。これはちょっといただけないなーと思う。さすがにこれを頭に巻いている職員には遭ったことがないですが...とはいえ、同じ女性としてはとても個性的で実に頼もしく思えてしまいました。
Berlinをでると、人っ子一人いない緑の丘がひろがります。その中に幾本も白く優雅な足がすっくと立っている。風力発電のかざぐるまが、やる気なさそうにゆっくり回っています。ICEは果たして時速何キロで走っていると思いますか?新幹線に乗っている時に経験する、あの不快な耳鳴りをICEでは経験したことがありません。何より風景が流れていくのがゆっくり。のどかな風景のためばかりでもなさそうで超特急というにはあまりに時間がかかる。ベルリンを拠点に考えた場合、ハノーファーへは2時間。ルール地方、例えばデュッセルドルフへは約4時間。ミュンヘン、フライブルクへはなんと8時間もかかります。ここで
(写真1/こちらをクリック)ICEの最大速度別路線図(icev-max)をご覧下さい。路線が色分けされているのがおわかりいただけると思います。これはICEがその区間で最大時速何キロで走行できるかを示したもので、水色が最大300km/h、青色が250-280km/h、緑が200km/h、赤が160km/h、黒は160km/h以下の区間となっています。このことはICEは必ずしも専用の幹線の上を走っているとは限らないということを示していて、ところによっては特急料金を払ってもほとんど時間短縮にならない区間もあるとか...
というわけで速さだけを売りにするのなら、私は新幹線に軍配を挙げましょう。さりとて、ICEは特別急行列車なのです。
ICEにはハインリヒ・ベル号(ドイツの文豪)、マレーナ・ディトリッヒ号(ドイツ30年代の大女優)などドイツの排出した著名人の名が付けられていますが、こうした愛称はICEだけに許されたもの。このことからもドイツ人、しいてはDBのICEに対する思い入れがうかがえるものです。では、どこに他の列車との違いがあるのでしょう。それはずばり、車内の心地よさにあるのではないかと思います。車内でゆったり快適にすごすという発想は、むしろ旅に時間がかかることを前提にしたところから生まれてくると考えられるからです。実際、ICEの居住性へ配慮には日本の新幹線も及びもつかないだろうと思われます。ご覧下さい、これがICEの1等キャビンです。
写真2 (写真2)ICE客車両内部の写真(1等)
1等車は黒の革張りのソファー、2等車はベロア調のソファーにいずれも清潔な枕が取り付けられています。背もたれは人間工学に基づいた立体設計になっており、ソファーはやわらかすぎず、硬すぎず。背もたれ部を手前下にスライドすれば、かなりの傾斜を確保することができます。床はじゅうたんが敷いてあり、音を吸収するので車内はごく静か。これでも眠れないとおっしゃる方には、もちろんエンターテイメントも充実。全席に小型テレビが設置されており(ICE/T型)、映画・ドキュメントなどを上演しているんです。また1等車では全席に、2等車でも8箇所程度電源があるので、出張途中のサラリーマンはノートブックでお仕事をすることも可能です。
(写真3/こちらをクリック)はICE座席図。一番上が1等車。コンパートメント後方に大きく取られたスペースは車椅子を置く場所だそうです。では、座席図下の斜めの線は何でしょう。ナントここは自転車置き場。ごみの収集は、車内でも新聞、カン、ビン、プラスチック、生ごみをきちんと分けています。日本でも分別収集の意識やモラルはまだまだ低いようですがこれは見習うべきでしょうね。車窓を楽しみながらの食事も旅の醍醐味。速く着きすぎるので日本の新幹線のように食堂車がなくなってしまった、なんてことはICEではありえません。手前がコーヒーショップと売店、その奥が食堂車(ボード・レストラン)です。売店にあるものは車内販売でも売りに来ますが、日本のようにクビからバンドをつるしたお姉さんが数種の弁当を掲げ、妙に鼻にかかった声で「あったかいお茶にぃ、幕の内ぃ」なんていうのはありません。大体は男性がカートでサービスし、頻度もそんなに多くありません。ちなみに車内で買うと値段は少々お高め。
ICEは今年6月2日で11才の誕生日を迎えました。
ICE製造プロジェクトにはドイツの名だたる機械工業メーカが参加。例えば、機関車のシールド部分(写真)はその大部分がKrauss-Maffei(ミュンヘン)で作られました。シールド内部の機関部は上記のKrauss-MaffeiのほかKrupp(エッセン)Thyssen-Henschel(カッセル)が携わりました。電気設備にはAsea Brown Boveri、AEG-WestinghouseそしてSiemensなど。まさにドイツ産業界、叡智の結集なのであります。ICE最初の受注分(1985年)で、機関車一機あたりの費用は4.35億オイロ、一客車両あたりの製造費は1.3億オイロ、食堂車は2億ユーロです。1オイロ約115円で換算すると...まさに驚きのコストです。
さて、列車はHannoverへつきました。私はここで失礼しますが、当サイトのトップページ画像のミニクラブ88713、ICE-3を含めたおまけの写真館でお楽しみ下さい。では次号はどんなネタでいこうかな?リクエストがあればメールくださいね...Mit herzlichen Gruessen,Y. Miyake
(取材〜文章・写真提供/Y. Miyake、編集/T.Sakamoto)
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