Riffelberg(リッフェルベルク)、Rotenboden(ローテンボーデン)まで来ると、さすがに植物も生えないのか、瓦礫の殺伐とした風景になってきました。こうして絶えずマッターホルンの頂を見ながら、終点のGornergratまであっという間の40分でした。降車する人の波が絶えるのを待って、電車の写真を撮っていると (写真27、写真28)、線路が通常のものと違うのに気がつきました。「真ん中になんかあるよー」と、その声を聞きつけたが早いか、線路を横切っていたツアー客の波から一人のおじさんがはずれ、こちらに接近しつつ説明するには、「これね、アプト式っていうの。ええ、ここにギアを噛ませて登るんですよ。二本だけじゃ滑っちゃうでしょ。うん、登りも下りもね。」と言い残して、またツアー客の中に消えて行ったのでした(写真29)。この一見(一聞かな?)素人じみた説明は、しかし、その後の調査で「得てして妙」だったということが判明するのでした。つまりアプト式とは「2本のレールの中央に歯型のレール(歯軌条、ラック)を敷設し、機関車に設置された歯車(ピニオン)とかみ合わせることで、急勾配を登り下りするための推進力と制動力の補助とする」鉄道のことで、この説明はおじさんの説明と大所変らぬものだったのです。
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