2011年7月 のアーカイブ

2011年7月9日

リリパットレーン

精巧でかわいらしい、建物のミニチュア。きっと皆様も一度はご覧になったことはあると思います。


海外ではお土産品として数多く見られますが、こちらの作品は英国の「リリパットレーン製」。同社の作品にはメーカー名のイニシャルが刻まれているほか、職人の名前やモチーフになった建物の歴史などが記されたカードが付属されている逸品です。

日本ではジブリ作品で登場する建物なども制作、最近では英国のロイヤルウエディングを記念したウエストミンスター寺院も特別記念作品として発売、ともかく精巧なつくりとペイントの表現力は素晴らしく芸術品と賞されています。

今回はお客様から、このリリパットレーンの修理依頼がありました。作品はずっしりと重い石膏製で、とても高価な限定品です。ところが欠けがあちらこちらに。。。痛ましい姿で入院されました。

まずこちら。ボートが割れて、表面の塗膜の皮一枚でかろうじてつながっている状態でした。


接着剤だけの修理では納得がいかなかったので、虫歯を治すように欠けた部分周辺を削り取って再成型して、乾燥後に調色ペイントして仕上げました。


続いてはリリパットレーンの特徴でもある珊瑚のようなブッシュの部分、大きく欠けて石膏が露出していました。


ここも周辺を削って、やや大きめに肉付けして同じディティールになるようにカービングしてからペイント。写真は重ね塗りして仕上げる前のものです。よく見ると、どこが修復した部分かまだわかりますね。


今回の修理の最大の難関はこの煙突、金属の芯が突き出た状態で、元の形状がわからない状態でした。


はて、作品は量産(ロストワックス製法)のはずなのに、金属の芯?まるで一点もののような作りに、どうやって芯を入れたんだろう。。。あれこれ想像しながらの作業です。幸い、同じテイストの煙突があったのでそれを模刻するようにして仕上げました。これも下塗り時の写真です。


この他、数十ケ所の欠けを修復して、今回の作業は完了しました。最後に各部、汚れが堆積していたので念入りに洗浄すると、何と色鮮やかなことでしょう。素晴らしい、リリパットレーン!総ムクなので出来ませんが、私の習性でつい光がほしくなってきます。


HPを通じて「ジャンル違いだけど、おたくなら治せるのではないかと思い。。。」そういったいろいろなお問い合わせをいただきます。

とても有難いことです。実は今までにも、玩具やドールハウス、仏具、巨大な銅像などなど、いろいろな修理のご相談にお応えしてきました。これからも裏家業(笑)は、ひっそりと続けていこうと思っております。

あれれ、日が変わって今日は私の誕生日ではありませんか!すっかり忘れてました~

2011年7月2日

メルクリンZ・メンテナンス(2)


度々ご紹介しているメルクリンZゲージのメンテナンス。。。

今日はSBB(スイス国鉄)Re4/4 460型が入庫してきました。洗練されたデザインの本機は、フェラーリのデザイナーでも知られる、イタリアの巨匠、ピリンファリーナ氏が手掛けたことでも有名な人気車両です。

入庫車両は、片側の台車に集電がかからないとのこと。この車両は電極の一方は金属シャシーにボディアースされています。写真は分解後のシャシーを上側から見たものです。


この上に基板が乗り、固定ビスで電極を介してシャシーに通電し、一方の電極がボディアースされます。内部はご多分にもれずオイルでベタベタでしたので、洗浄したあと、テスターでチェックしました。

下側二つの電極に導通があれば確実にボディアースされているわけですが、導通がありません。。。


一見、何の問題もないように見えた一方の電極、

0.2mm厚のシックネスゲージをシャシーと電極の間に軽く差し込むと、電極がかしめからポロッと外れました。生産時のかしめが甘かったことはあきらかで、なかなかお目にかかれないトラブルでした。


これが原因で、こちら側の台車への通電が不良だったことが不調原因でした。

電極の裏側をもう一度、清掃して「叩き棒」を使ってかしめを行ないます。定盤の上に薄紙を敷き、シャシーに変形や傷が付かないように、慎重に少しずつ様子を見ながらで叩いていきます。


その後、各部も入念に清掃と点検をして460型は完璧なコンディションに蘇りました。
今回使った「叩き棒」をよく見ると。。。


スイス車両はスイス工具で治せ。。。でしょうか(笑)

メルクリンZゲージのメンテナンス、常時受付しています。

心をこめて、丁寧に整備させていただいております。

どのようなことでもお気軽にご相談下さい。